製造業においてコスト削減やCO₂排出量の削減は重要な課題である。そのため豊富な地下水を熱源に利用し、夜間電力で冷温水を同時に作ることのできる「水熱源エコキュート」を導入した。

環境負荷を減らしつつコスト削減を実現

従来の重油ボイラーに比べ、CO₂排出量と一次エネルギー使用量を大幅に削減。
重油使用量だけでなくボイラー薬剤の使用も減り、コストダウンを達成。

CO₂削減

水熱源エコキュートの導入により、前年比で77%の削減を実現。
省エネ法に定められた削減量もクリアできた。

エネルギー使用量削減

洗浄用温水を水熱源エコキュートで作ることで、重油使用量が大幅に低減。さらに同時に作り出される冷水をチラーの補給水とすることで、コンプレッサーの負荷を低減。
一次エネルギー使用量は、前年比で72%の削減を実現した。

安定性

外気温に左右されない井戸水を熱源として使用する水熱源式のため、寒冷地でも年間を通じ安定した能力を発揮できる。

作業効率アップ

従来はボイラーからの蒸気と水を調整することで温水を作り出していたが、水熱源エコキュート導入後は直接温水が出るため操作が簡略化。時間短縮にもつながり、作業効率もアップした。

安全性の向上

直接蒸気を扱わなくなることで、従業員の火傷の心配がなくなり、安全性が向上した。

北陸メイトー乳業株式会社が位置する白山市は、白山連峰から流れ出る豊富な湧水に恵まれている。
「アイス菓子の製造には大量の冷水・温水を使用します。そこで、この恵まれた立地を活かして、井戸水の安定した熱エネルギーを利用できないかと検討していたところ、業務用大型エコキュートを知ったのがきっかけです」施設課長 田中氏
従来、同社は温水を重油ボイラー、冷水をチラーで供給していたが、このうちの一部を水熱源エコキュートに置き換えることになった。
決め手となったのは「やはりコストとCO₂削減です」と取締役の佐藤氏は語る。導入当時は重油価格の高騰に悩んでいたこともあり、夜間電力を使用して安価に冷水と温水を作り出せる水熱源エコキュートは魅力だった。さらに重油ボイラーの稼働率が減ることでCO₂排出量の削減にもつながり、「まさに一石二鳥」だったという。

水熱源エコキュートの導入によって、夜間にチラーの温排水を熱回収して温水を作り、同時に冷水を作っている。こうして作り出された温水は調合室の洗浄水および従業員の手洗い用温水の二系統に、また冷水はチラーの補給水としてコンプレッサーの負荷低減に使用されている。
そして、その他にも意外なところでメリットが現れた。
「今まで機械の洗浄用温水は、ボイラーからくる蒸気と冷水を合わせて作っており、操作しづらいものでした。ところが水熱源エコキュートでは温水がそのまま低圧で出てくるため、すぐに洗浄に使用できます。調合室では一つの槽を使い回して複数の味を調合するため、洗浄のスピードアップは思った以上に作業の効率化につながりました」工場長兼製造課長 押野氏

さらに、湯温設定が手元で行えること、蒸気を直接扱わないことから、安全性の向上にもつながった。
実は導入前に想定していた温水側の用途は、あくまでボイラー蒸気と合わせて一定温度の温水とし、使用するという副次的なものだったが、予想以上に安定した温水が作り出せたため「最も使用頻度の高い洗浄水にそのまま使おう」取締役 佐藤氏ということになったという。
また同工場では、調合室だけでなくアイス製造ラインも定期的（週1〜2回）に商品を入れ替えており、その都度機械の洗浄が必要となる。現在、機械洗浄用温水にはボイラーを使用しているが、今回の導入で水熱源エコキュートによる温水の取り回しの良さから、もう一台導入して湯量を増やし、製造ライン用に使用することも検討中だという。

調合室の機械洗浄

水熱源エコキュート×1
・加熱能力：93.0kW
・消費電力：20.8kW

北陸メイトー乳業株式会社
白山工場
石川県白山市源兵島町1002
TEL.076−277−1311