技術文献
【機関誌「エレクトロヒート」記事】
EH_No.216 (特集:工場空調)
①赤外線ランプヒーター式工場用暖房器 |
河村 和彦 中部電力株式会社 エネルギー応用研究所 研究副主査 吉原 寛美 メトロ電気工業株式会社 本社 技術部 第二技術課 課長 |
天井が高く広いスペースが必要な組立工場や設備が大型で天井が高い金属加工工場では、効率的な空調システムの設置が事実上困難であり、しかも面積比で作業員が少人数の場合が多い。やむを得ず電気、石油、スチームなどを熱源とした据え置き形の暖房器が使われているが、安全性や作業性に対する課題も多い。そこで我々は、上層の広い空間を利用した天吊り式暖房器を開発した。赤外線を一定方向に集光することで、スポット的で効率の良い暖房とするため反射板を工夫し、より高効率で安全性と省エネ性に優れた赤外線ランプヒータ式工場用暖房器を紹介する。 |
EH_No.214 (特集:乾燥工程のエレクトロヒート技術)
①乾燥工程における赤外線ランプヒーターの提案 |
倉田 征治 メトロ電気工業株式会社 技術部 第一技術課 課長 |
様々な分野における乾燥工程において、生産性向上達成のため急速乾燥や品質向上が求められている。高速乾燥には『高効率』であることが絶対条件である。すなわち加熱ロスの発生とは、イニシャル、ランニングコストの加算ばかりか、外部に放出された熱エネルギーは作業環境温度の上昇や熱ダメージによる設備の劣化原因となる。乾燥の高速かつ高品質を実現するには、赤外線の熱流伝達が効果的であり、塗料などの色毎の吸収波長の違いによる加熱ムラも、ヒータからの放射波長の工夫によって対応可能となるケースも多い。本稿ではこの赤外線放射に特化したランプヒータについて、熱風との比較、赤外線加熱の原理、諸法則、ならびに各種ヒータの紹介と実際の採用事例について概説する。 |
EH_No.212 生産工程革新「アクアテック塗装」(第11回EHシンポジウム)
①生産工程革新「アクアテック塗装」 |
篠田 雅史 マツダ株式会社 技術本部 車両技術部 塗装技術グループマネージャー |
アクアテック塗装は、相反する揮発性有機化合物(VOC)排出量とCO2 排出量の同時削減を実現し、世界トップレベルの環境性能と優れた経済性を両立した工程革新技術である。工程革新の柱は塗膜機能集約と高効率塗装技術である。塗膜機能集約では、積層塗膜の光学特性や物理特性を解析することで、VOC 含有量の多いベース塗料の水性化にとどまらず、各層の機能分担を見直した塗膜設計と高機能塗料を開発した。高効率塗装技術では、エネルギー/資源効率から求められる工程の機能を追求し、水の蒸発や熱伝達の原理に基づいた省エネルギーブース空調や高効率フラッシュオフ工程等の開発・導入により超短縮/省資源化を実現した。また、アクアテック塗装の塗膜設計技術と工程技術を高意匠カラーにも応用し、塗膜積層数を増やすこと無く量産化を実現した。アクアテック塗装は、お客様への提供価値と地球にやさしいものづくりを両立させた革新技術であり、自動車塗装に限らず塗装業界全体へ広く普及する事を期待している。 |
EH_No.208(特集:赤外線加熱技術)~一部抜粋~
①赤外加熱技術総論 |
中野 幸夫 関東学院大学 理工学部 理工学科 電気学系 教授 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 特別会員 |
赤外加熱は赤外放射(赤外線)による熱伝達を主体にした加熱方式である。赤外放射は電磁波の 一波長領域における総称であり、多くの物質に吸収されやすい。赤外放射を吸収した物質は、物質自身 が発熱し、結果として加熱される。赤外加熱では、伝導加熱や対流加熱のように外部から物質に直接的 に熱エネルギーが与えられるわけではない。与えられるのはあくまでも赤外放射という電磁波のエネル ギーである。本稿ではこの赤外加熱について、原理、赤外放射に関する諸法則、使用されている赤外放射体、 ならびに応用事例について概説している。また、いくつかの最新のトピックスについても触れている。 |
②先端産業での用途拡大が注目される赤外線加熱の最新動向と業界構造の特徴 |
千葉 智滋 株式会社富士経済 東京マーケティング本部 清水 耕平 株式会社富士経済 東京マーケティング本部 |
赤外線加熱は遠赤外線・近赤外線に大別され、短時間・高品質を必要とするプロセスにおいて、 主に熱風加熱代替として導入されている。本稿では、赤外線加熱業界の調査結果を元に、赤外線加熱業 界の業界構造・主要な用途と今後注目される用途について報告する。業界構造として、ヒーターメーカー・ 装置メーカーに大別することが可能であり、導入用途による棲み分けやヒーターメーカー毎の得意領域 等も見られる。また、フレキシブルデバイスや炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)向け等の先端産 業向けの導入拡大が期待される。 |
③レーザ平面瞬間加熱装置ExLASERTMとその応用について |
千葉 貴史 坂口電熱株式会社 技術部 MKT 製・商品開発課 課長 |
レーザ加熱は、非接触でピンポイントにレーザ照射して、被加熱物だけを直接加熱するので、昇 温スピードと省エネに優れた加熱方法である。弊社は、レーザ加熱の特性を応用し、2インチサイズに 拡大したレーザ光を1ショット照射して被加熱物を均一に加熱し、細かく温度制御することが可能なレー ザ平面瞬間加熱装置ExLASERTMを開発した。そして、主にシリコンウェハのような平面状の材料を、レー ザ加熱で高温かつ急速に昇降温する用途開発を行ってきた。本稿では、ExLASERTM によるシリコンウェ ハへのレーザ加熱の実施事例と、ミニマルファブ(極小規模の半導体製造工場)においてアニール工程 を担うミニマルレーザ加熱炉の開発経緯を紹介する。 |
④ロールtoロール式遠赤外線加熱装置の適応事例 |
青井 一将 株式会社ノリタケカンパニーリミテド エンジニアリング事業部 ヒートテクノ部 |
機能性フィルムには、光学特性、導電性、ガスバリア性、耐熱性など様々な機能を有したフィル ムが存在し、エレクトロニクス、エネルギー、自動車、包装、メディカル等の多方面において商品の高 付加価値化に重要な役割を果たしている。今後もより一層製品の高機能化が望まれていく一方で、機能 性フィルムの生産性の向上は重要なテーマである。当社は機能性フィルムの熱処理プロセスに注目し、 各種ロールto ロール(以下、R to R)式遠赤外線加熱装置を開発した。その結果、従来の熱風加熱方 式と比較して処理時間の大幅短縮(2/3~1/2)が可能となり生産性の向上に大きく貢献した。また、フィ ルムの熱処理プロセスで度々問題となる外観上の諸問題(皺、カール、傷、伸縮等)の解決にも取り組み、 これらを解消する独自の搬送技術を確立した。今回は、それらR to R式遠赤外線加熱装置の適応事例 を紹介する。 |
⑤赤外線加熱による金型の予熱 |
倉田 征治 メトロ電気工業株式会社 技術部 第一技術課 課長 吉原 寛美 メトロ電気工業株式会社 技術部 第二技術課 課長 |
自動車産業の低圧鋳造工程での金型予熱はガスバーナによる燃焼加熱方式が一般的である。これ を安全性や温度管理のし易い電気加熱方式で可能とした。熱源にはIHなどと比べ安価で設計自由度の高 いジュール熱を利用したカーボンヒータを選定し、フィラメントや配置の改善で高出力、高効率のヒー タ管を開発、加熱器の構造なども工夫し電熱では無理とされていた480℃の温度上昇と加熱時間短縮を 実現した。さらに、均一加熱の効果で金型メンテナンスの低減や歩留向上など多くの効果が実証された。 |
EH_N0.204(特集:ホットスタンピング技術)
①超高強度高部材のホットスタンピング |
森 謙一郎 豊橋技術科学大学 機械工学系 教授 |
ホットスタンピングは自動車用骨格部材に用いる超高強度鋼部材を生産する加工法である。焼入 れ鋼板を高温炉でオーステナイト温度である900℃程度に加熱し、プレス成形を行って金型の下死点で 10秒程度保持して急冷する。金型保持によって成形品が焼入れされて、1500 MPa程度の超高強度鋼部 材が生産される。自動車の軽量化と衝突安全性向上のために、高強度部材が必要になってきており、ホッ トスタンピングの適用が世界的に急増している。鋼板の加熱にはローラー移送式加熱炉が一般的に用い られているが、赤外線加熱、通電加熱が適用されつつある。本稿では、超高強度鋼部材のホットスタン ピングに関して解説を行う。 |
②ホットスタンピング用赤外線加熱装置 |
青木 康浩 株式会社ワイエイシイデンコー 生産技術部 |
当社の技術コアの一つである遠赤外線による熱処理技術は、高精度かつ高効率として様々な業界で用いられ、高い評価を得てきた。ホットスタンピングにおいても同様で、海外メーカを中心に先行する横型搬送加熱炉に対し、省設置スペース・省エネルギー性能に優れる当社の多段式枚葉搬送遠赤外線 加熱炉は業界で注目されている。本稿では、遠赤外線加熱の基礎、加熱方式や装置形態の違いによる課 題及び当社の加熱装置について紹介する。 |
EH_No.200(特集:エレクトロヒートの未来を展望する)
①赤外加熱技術 |
中 野 幸 夫 関東学院大学 理工学部 理工学科電気学系 教授 |
EH_188(特集:最新の電気加熱技術)
①ハロゲンランプによる赤外線加熱の応用 |
菅野 雄太 岩崎電気株式会社 光応用営業部 セミコン・オプトデバイス営業課 |
工業用加熱方式としてハロゲンランプが利用されており、今後においてもその特徴を生かし幅広い分野において活用されると思われる。今回、赤外線の概要及び赤外線加熱の原理、ハロゲンランプの特徴・技術とその応用例について紹介する。 |
EH_No.175(特集:電気加熱特集Ⅱ)
①遠赤外加熱の特異性を考察する―その効果を追及するために |
木村 嘉孝 木村技術事務所 |
遠赤外加熱には普通の加熱方法では見られないような優れた効果がありながら、その根拠がきちんと説明されていないまま、誤った解釈が流布し、それが一層学識者の反論を招いて、未だに完全な信頼を勝ち得ていないのは、真に残念なことである。これら識者の反論には、実はこれまた誤解に基づくものが少なくないのである。本論では、これらの誤った解釈とその背景を詳しく考察し、正しい解釈とその根拠を提言したい。あわせて実際のいろいろな応用面ごとに、その効果を可能にした遠赤外加熱の特徴や理由を明らかにしようと思う。 |
②印刷・塗装乾燥工程へのクイックヒータの適用 |
樫本 尊久 テーピ熱学株式会社 |
各種製造ラインには、多くの加熱・乾燥工程が存在し、ワークの搬送方法もさまざまであり、また加熱・乾燥工程に使用される熱源・手法も加熱条件にあったものが使用され、その数は計り知れない。その中でも遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法は、従来の方法からの転換により、効果が顕著に顕れることに特筆すべきものがあり、今後もこの遠赤外線ヒータを利用した加熱・乾燥方法が見直されていくことを期待するものである。弊社が納入した設備においても、各種の加熱・乾燥工程での改善に役立ち、評価を得ている。今回は、その中から印刷・塗装乾燥工程への設備導入事例および特徴・効果について紹介する。 |
③遠赤外線暖房機セラムヒートの開発 |
瀧本 浩之 ダイキン工業株式会社 |
人を暖めるための暖房器具には空気の対流によって部屋全体を暖める対流形、ふく射熱により暖めるふく射形と発熱体に直接触る伝導形がある。今回紹介させていただく遠赤外線暖房機セラムヒートは、ふく射形の暖房器具に分類されるものである。ふく射形の暖房器具は、ふく射熱で直接対象物を暖めるため、部屋全体を暖めるのには適さないが、部屋で働く人だけを暖めたい場合などに効率よく暖房が可能である。セラムヒートはこの特徴を生かし、大空間や半開放の工場などで働く作業者のみを暖められる、衝撃に強く、どこでも手軽に使えるコンパクトさと離れたところからでも暖めることができるふく射性能を備えた暖房機として開発された。 |
④ハロゲンランプ式高効率過熱蒸気発生器 |
長 伸朗 中部電力株式会社 |
過熱蒸気とは、沸点(大気圧下では100℃)より高い温度の乾いた水蒸気である。高速・均一な加熱が可能なことから、熱風に替わる新たな加熱媒体として近年注目を集めており、200〜400℃の過熱蒸気は食品調理や機械部品の洗浄等に活用されている。今回、350℃の過熱蒸気を発生できる電気式の過熱蒸気発生器を開発した。ハロゲンランプの採用により、従来より高効率・低コストで、高精度の温度制御性能および高い設置性を実現した。ここでは、開発したハロゲンランプ式高効率過熱蒸気発生器の概要を、適用例をまじえて紹介する。 |
⑤リチウムイオン電池製造用高効率乾燥炉の開発 |
米川 英樹 株式会社ノリタケカンパニーリミテド |
「リチウムイオン電池」は、1990年から携帯電話やパソコン等に使用されている二次電池である。近年では自動車用の二次電池として注目を浴びている。ハイブリッド車や電気自動車用途では生産性・品質がより重要視されるため、高性能で効率の良い量産設備が必須である。当社は、電極を製造する工程の一部となる塗工乾燥プロセスに注目し、熱媒式(防爆型)遠赤外線ヒーターを組み込んだ高効率乾燥炉を開発した。その結果、従来の熱風乾燥方式に比べて乾燥処理時間を大幅に短縮(2/3〜1/2に短縮)することに成功し、処理速度(ラインスピード)を1.5〜2倍にすることができた。また、遠赤外線加熱の効果が塗工膜乾燥後の仕上がりに寄与し、品質向上にもつながった。今回はその具体的な技術の概要を紹介する。 |