日本エレクトロヒートセンター

>
エレクトロヒートNo.177

エレクトロヒート No.177

 

【特集】ヒートポンプシステム特集Ⅰ(空調・未利用熱・寒冷地仕様)
 

佐々木 正信

財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター
業務部 課長

現在から将来にかけて日本が直面する課題である、震災影響による短期的な省エネ徹底、中期的な震災復興としての「災害に強い省エネルギー社会」構築、長期的な低炭素社会構築のすべてにおいて、需要側の省エネルギー技術であるヒートポンプ・蓄熱システムは大きな貢献を果たすことができる。また、系統電力の電力ピーク時間帯における電力消費量削減や災害時の生活用水貯蔵などの重要な役割に加えて、太陽光発電などの大量導入時における系統安定化対策としての役割も期待されている。本報では、ヒートポンプ・蓄熱システムに関連した国内外の動向について紹介する。

 

 

 

吉田 茂

三菱重工業株式会社  冷熱事業本部  空調機技術部 店舗パッケージエアコン設計グループ  主任チーム統括  給湯機 開発チーム

ヒートポンプ給湯機は、家庭用を中心として市場に普及しつつあるが、外気温度の低下に伴い加熱能力が低下することから、北東北や北海道等の寒冷地域では普及しいていないのが現状である。
今回、当社は世界初となるスクロータリ式二段圧縮機の搭載+ガスインジェクションサイクルを採用した業務用CO2ヒートポンプ給湯機の開発を行った。この給湯機の最大の特徴は、外気温が-7℃まで低下しても定格加熱能力を維持し、-25℃でも90℃の温水を出すことが可能である。また中間期COPは業界トップの4.3を達成する。
今回、これを実証すべく、北海道(極寒冷地),岩手,富山(積雪の多い地域)の3箇所にてフィールドテストを実施しており、この運転データを紹介する。
更に、加熱能力の評価以外に、水配管の凍結防止対策の確認等、寒冷地での実使用に対する信頼性評価結果についても紹介する。

 

 

 補助金等優遇制度を活用した空調システムの導入事例

 

岡 部  信 也

日立アプライアンス株式会社
空調営業本部 営業支援部 部長代理

「低炭素社会の実現」へ向けての政策がより一層強まってきている。日立グループでは補助金などの優遇制度を活用する「省エネ提案」にて、高効率型ヒートポンプの普及と電化を推進した。省エネに関する補助金の獲得には電化案件が有利となる。その事例を幾つか紹介する。
①「四万温泉佳元さま」[群馬];暖房ボイラー(灯油)を寒冷地向けパッケージエアコンに更新。
②「氷見水産センターさま」[石川];吸収式冷温水機(灯油)から高効率型店舗用エアコンに更新。
③「東お茶の水ビルさま」[東京];旧型エアコンから高効率型マルチエアコンに更新。
④「ポーラ化成工業さま」[静岡];暖房ボイラー(A重油)から高効率型マルチエアコンに更新。
⑤「佐藤病院さま」[栃木];KHP(灯油)+給湯器(ガス)〔厨房用途〕から
高効率型マルチエアコン+業務用エコキュートに更新。
⑥「某研究施設」[茨城,静岡];吸収式冷温水機(ガス)から高効率型空冷ヒートポンプチラーに更新。
⑦「太子食品工業さま」[岩手];水冷ブラインチラーを導入して、冷熱[氷蓄熱]と温熱(排熱)を同時利用する「排熱回収ヒートポンプシステム」を構築。

 

 

 

柴 芳郎

ゼネラルヒートポンプ工業株式会社
常務取締役 営業本部長

 

映寿会みらい病院さま(金沢市)に空冷チラー+ボイラーの改修として導入された地下水熱利用ヒートポンプシステムにより、大幅な省エネルギー、省CO2、省コストな冷暖房・給湯システムが構築され、その効果が実証された。導入されたシステムの特長は以下の通りである。 ・安定した温度の地下水を利用 ・A重油を一切使用しない電気式ヒートポンプによる冷暖房・給湯システムを実現 ・排熱回収型ヒートポンプにより冷房時の給湯の熱が無償で取得可能

 

 

「低温再生型デシカント除湿機+温水ヒートポンプ」による除湿システム

 

山口 雅弘

新晃工業株式会社
除湿機空調機技術担当 副長


低露点空気(乾いた空気)を生成する装置としてデシカントロータ(吸着剤)を利用したデシカント除湿機がある。デシカントロータを空気が通過する際に空気中から水分を奪うが、デシカントロータは含んだ水分を放出(再生)しないと連続的に除湿が行われない。デシカントロータを再生するには従来は100℃以上の高温な再生空気を必要としていたが、100℃以下の空気でも容易に再生ができるデシカントロータの新吸着剤が開発された。それにより、従来は再生用の高温な空気を生成する熱媒体に蒸気などが利用されていた。しかし、新しい吸着剤により再生温度が低温化され、再生用空気の生成用の熱媒体として温水の利用が可能になった。これにより新たな可能性として、高温水ヒートポンプとの組合せ、80℃以下で有効利用されずに排熱されていた未利用熱など、これらとのシステム構築により、乾燥した空気の生成、室内の湿度コントロールの新たなる可能が広がった。その特徴、システム例などをここで紹介する。

 

 

 

竹田 憲通

株式会社竹中工務店 広島支店

川崎医科大学附属病院は岡山県倉敷市に位置し,病床数1,182床の規模を有する特定機能病院である。北館棟は,救命救急外来・病棟の拡大と機能充実を目的に計画され,旧川崎リハビリテーション学院の建物を解体し,その跡地に平成21年3月に完成した。
冷熱源は蒸気吸収式冷凍機を主とし,ターボ冷凍機と併用してきたが,近年の原油価格上昇を受け,ターボ冷凍機のみとしている。また,給湯にはヒートポンプチラーを導入し,既存蒸気熱源と併用とするなど冷温熱源を電気式にシフトし,高効率の機器を採用するとともに蓄熱を組み合わせることで,省エネルギーと環境負荷低減につなげている。

 

 

【ヒートポンプ給湯講座】
 

 

株式会社Q研技術士事務所

代表取締役

杉村 允生

 

 

【特別寄稿】
 
 

加藤 泰啓

三菱電機エンジニアリング株式会社
中津川事業所 エンジニアリング事業センター 業務用送風機技術課 主査

工場等が消費するエネルギーにおいて空調エネルギーの占める割合は少なくなく、省エネを促進していく中では重要な改善アイテムである。しかし工場等に代表される大空間では空調効率は必ずしも良いとは言えず、一方で作業エリアの温熱環境の改善も以前より必要とされてきている。今回ある製造工場にて、空調機の燃焼式から電気式への熱源転換に加え、エアー搬送ファンを利用した気流ゾーニング空調方式の導入により空調効率を高め省エネを図りながら温熱環境改善を図ったので、その特徴と効果を事例を踏まえながら紹介する。

 

 

 

 

植田 博

東海高熱工業株式会社
本社 ビジネス本部 参与 工業炉担当

これまで1000℃を超える抵抗加熱方式のバッチ炉においては焼成される製品にセラミックスなどの材料が多く、焼成時に急速昇温を必要とされることは稀であったが、最近のナノ粉末、小型成形材料や積層MLCCチップの焼成、蛍光体用粉末の焼成などにおいては急速焼成を要求されることが多くなってきた。またCO2削減における省エネの観点よりは、これまでの焼成方法を見直し、短時間で焼成して省エネを計るため、従来の温度プロファイルを見直し可能な限り昇温速度を速めることが検討されるようになってきた。今回紹介するラックヒーター炉は、このようなニーズに合わせて、これまでの抵抗加熱式バッチ炉では不可能であった高温域までの急速昇温を目的に開発された焼成炉である。急速昇温の手段として従来のように単にヒーターの設備電力を増やすことなく、棚各段にヒーターを取り付けた分散加熱構造として急速昇温を可能にした。ヒーター構造が棚板状になっていることよりラックヒーター炉と称している。その炉の構造と性能について簡単に説明する。

 

 

 

新田 治義

株式会社テクノカシワ ヒータ事業本部長 常務取締役

永田 一衛
タイコサーマルコントロールズジャパン株式会社 技術部長

工場における配管の凍結防止、プロセス保温には、融通性と簡便さから、従来より蒸気(温水)トレースが多く採用されてきた。しかしながら、CO2削減ニーズを背景に蒸気トレースの低効率性から蒸気レス化が進むと共に、電気トレース技術の進歩と相俟って電気トレースによる省エネルギー効果が注目されている。本稿では蒸気(温水)トレースと電気トレースについて一般的な観点からの経済性、性能、環境性の比較を行い、最新の電気トレース制御技術による省エネルギー効果、CO2削減効果の一例として、外気温度比例制御を凍結防止回路に適用した例について紹介する。

 

 

【会員紹介】
 
 

古神子 祐介

サイエンス株式会社
環境ソリューション推進部 eco推進グループ

当社は廃熱回収型ヒートポンプ熱源機のメーカーである。地球規模での温暖化防止対策が急務となっている現在、CO2排出量の削減にヒートポンプシステムが大きな役割を担っているのは周知の通りであるが、当社はその中でも、廃熱回収型ヒートポンプに重点を置き、様々なお客様へ省エネ・省CO2の提案を行っている。最近では食品工場等、今後のモデルケースとなるような事例も増えてきている。当社は今後もヒートポンプ熱源機メーカーとして、地球温暖化防止に貢献していく。

 

 

 

山下 興郎

株式会社テクノカシワ
代表取締役社長

当社は、アメリカTyco Thermal Controls社が製造するRaychem自己制御電気ヒーターを中心に、国内外の電気ヒーターを各種取り扱い、凍結防止からプロセス保温までヒートマネージメントを通して、省エネ・CO2削減に役立つ事を目指すエンジニアリング商社である。

 
 
【追悼文】
 
百田先生を偲ぶ
 

久保田勉 一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 特別会員