日本エレクトロヒートセンター

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技術文献

技術文献

学会誌・専門誌 等
 月刊「省エネルギー」[発行:一般財団法人省エネルギーセンター](2021年5月号・6月号)

 連載 現場で役立つ省エネの基礎

 ・産業用電気加熱-誘導加熱の省エネ その 1 熱加工

 ・産業用電気加熱-誘導加熱の省エネ その 2 溶解

 技術委員会 誘導加熱技術部会

 

【機関誌「エレクトロヒート」記事】

機関誌のご案内

EH_No251【特集】工業炉(熱処理)の電化について考える
①カーボンニュートラルに向けた工業炉の 電化への想いと取り組みについて
渡 邉 規 寛(わたなべ のりひろ)一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 企画部 部長
要約 カーボンニュートラルの切り札とされている電化。しなしながら産業分野の電化に向けたプロセ スは、長く険しい山登りとなっているのが実情。そこで改めて産業電化とカーボンニュートラルとの関 係性・役割、産業電化における課題整理(昨年度の調査結果)、更なる取り組みなどについて紹介し、工 業炉(熱処理含む)における、電化普及の一助として活用頂けるよう、本特集を企画しました。
②カーボンニュートラルに向けた工業炉の 電化状況など調査結果
清 水 耕 平(しみず こうへい) 株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 課長
八 浪 佑 亮(やつなみ ゆうすけ)株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 AD
要約 カーボンニュートラルに向けた工業炉の電化について、電化事例および、関係者ヒアリングによ る工業炉種別の現状と電化の方向性を整理した。電化事例調査では、鋳造向けの誘導溶解炉やアルミ溶 解炉の保持炉や溶解保持炉、表面熱処理炉の真空浸炭炉や光輝焼鈍誘導加熱の電化事例が主に公表され ていた。関係者ヒアリングを元にした電化の方向性では、鉄鋼溶解炉、アルミ溶解炉、鉄鋼加熱炉、一 般熱処理炉、表面熱処理炉を対象に調査し、アルミ溶解炉、アルミ熱処理炉、浸炭炉にて電化の進展が 有望視されるとの結論を得た。また水素転換の可能性について、コストおよび品質の課題が明確となった。
③カーボンニュートラルに向けた工業炉の 電化について
加 納 利 行 (かのう としゆき)  富士電機株式会社
高 橋 良 治 (たかはし りょうじ)一般社団法人日本工業炉協会
加 藤 健 次 (かとう けんじ)   一般社団法人日本工業炉協会
要約 工業炉は、鉄鋼、自動車、電気、電子、窯業、化学 工業等の多くの産業分野において、各種の原材料を加 熱、熱処理するために必須な設備である 1)。わが国の 工業炉の消費エネルギーは、国内全体の約 15%を占 めており、2050 年のカーボンニュートラル社会構築 を目指す上で、工業炉の取り組みは極めて重要である。本報では、工業炉のカーボンニュート ラルに向けた電化のポテンシャル及び今後の課題につ いて述べる。
➃カーボンニュートラルに向けた工業炉の 電化事例
山 口   剛 (やまぐち たけし)三建産業株式会社 営業本部 本社営業部 部長
要約 工業炉が消費するエネルギーは、日本全体のエネルギー消費量の 15%に相当し、その温室効果ガ ス排出量は、日本全体の 12%を占めていると見積られている。三建産業株式会社は、2022 年度中期経 営計画に「競争力ある脱炭素工業炉メーカーになる」という柱を掲げ、2030 年までに当社の工業炉か ら排出される二酸化炭素を 50%削減するという目標とし、工業炉のエネルギー削減・電化推進・燃料転 換・老朽化更新に積極的に取り組んでいる。当社が設計、製造した抵抗加熱式工業炉には、台車移動式、 炉体移動式、回転炉床式などがあり、主に素形材の加熱および熱処理に使用されている。本稿では、当 社が現在まで納入してきた抵抗加熱式工業炉の概要、採用実績など紹介する。
⑤工業炉・熱処理分野の電化実現に向けた 赤外線加熱による試験結果
倉 田 征 治 (くらた せいじ)メトロ電気工業株式会社 技術開発課 課長
要約 経済産業省では工業炉のカーボンニュートラル化推進のため、アンモニアや水素による燃焼や、 電磁誘導などを活用した電化を推進している。しかしながら赤外線加熱活用は検討されていない。クリー ンで、取り扱いも容易、高効率、低温温度帯では活用されている赤外線加熱技術が検討されていない理 由は、現行電化できていない工業炉はより高エネルギーが必要であり、従来の赤外線加熱技術では出力 が不足していたためである。また電気を使って発熱し、そこからの熱放射を利用する赤外線加熱技術は、 たとえ実現できても効率が悪いとも考えられていたことも理由にあげられる。しかしながら、昨今の赤 外線技術はより高出力となっており、また放射加熱を工夫することによって高効率化させ、省エネ性も 実現させることが出来る。本研究では、あらたな赤外線技術によって従来加熱できなかった温度領域に ついて試験し、そこから得られた知見を概説する。
 
EH_No249【特集】脱炭素に貢献する産業用ヒートポンプ
①金属3Dプリンタによる誘導加熱コイル製作
今 増 寿 尚 (いまます ひさなお)電気興業株式会社 高周波統括部 開発部 開発課 課長
要約 高周波誘導加熱で使用される加熱コイルは、加工部品(以下、ワーク)形状に合わせたコイル形 状となるものが多く、1 品 1 品形状が異なる。従来の加熱コイル製作では、銅材を形状に合わせて加工 した後、ロウ付けにより接合して製作していた。製作に時間がかかる、使用中にロウ付け部分から破損 する、ロウ付け技術者の育成など問題があった。その解決策として当社では金属 3D プリンタによる加 熱コイル製作について 2015 年より開発を進め、2020 年より市場投入している。ロウ付け製作での加 熱コイルの問題解決をはじめ、今まで製作できなかった形状の加熱コイルを提供できるようになり、加 熱品質の安定・加熱コイルの耐久性向上に成功しているので紹介する。
 
EH_No248【特集】第17回エレクトロヒートシンポジウム

①省エネに貢献する IH 用新型 PWM インバー タの製品ラインナップ

石 間   勉 (いしま つとむ)島田理化工業株式会社 生産本部 産業 IH 技術統括

要約 弊社では 2020 年に低周波用の新型 PWM(Pulse Width Modulation)インバータの販売を開始し、省エネ機器として順調に販売拡大中である。今回、主に 100 kHz 以上の高周波帯の用途に対して、「SCT-SW シリーズ」として PWM インバータを開発・製品化し、IH 用途のほぼ全周波数範囲を新方式のPWMインバータで製品ラインナップ化できた。ここでは新型 PWM インバータについて、電源力率・電源効率改善のための共通する 4 つの技術と回路特徴について説明する。

 
②高周波焼入れにおける IoT 基盤 FD-ioT (エフディオット)の取り組みについて
大 垣   孝(おおがき たかし)富士電子工業株式会社 システム開発室
要約 製造業において取り組むべき課題として年々優先度が上がっている脱炭素。その課題に対して当社富士電子工業は、高周波誘導加熱装置そのものによる取り組みに加え、装置のスマートメンテナンスを実現する IoT サービス(商品名:FD-ioT( エフディオット ))を開始した。遠隔監視、定期レポート、計画的メンテナンスを提供する FD-ioT。その主な機能、導入によって期待される効果、ロードマップについて、CO₂ 排出削減効果だけでなく、SDGs、働き方改革などへの効果も交えながら紹介する。
 
EH_No247【特集】業務用電化厨房の未来

①【特別寄稿】円弧状導体によるコイルの導体抵抗低減

鈴 木 祥 充 (すずき よしみつ) 

タツタ電線株式会社 ワイヤー&ケーブル事業本部 生産統括部 開発部

要約 高周波誘導加熱装置の加熱コイルにおいては表皮効果や近接効果の影響により電流分布に偏りが 生じる。その結果、電流の流れる実質的な導体断面積が小さくなるため、導体抵抗が大きくなることが 知られている。省エネと効率化のためには加熱コイルの導体抵抗の低減が求められる。高周波における 加熱コイルの導体抵抗を低減させる形状として、円弧状の断面形状を考案し電磁界シミュレーションに より効果を確認した。その結果、円弧状導体を使用することにより、従来のパイプ形(O 字状)と比較 して損失を約 30 % 低減し得ることが確認された。
 
EH_No245【特集】カーボンニュートラルに貢献する電気加熱技術

①IH 技術で推進する CO2 排出量削減と低炭素社会の実現に向けた取り組み

加 納   聡 (かのう さとし)

高周波熱錬株式会社 人財本部 人財開発部 人財育成センター長

要約 1985 年のオーストリアのフィラハで開催された世界会議にて CO2 による地球温暖化の問題が取 り上げられてから 30 数年、パリ協定の目標採択を経て、ここ数年で日本を含む世界中で地球温暖化防 止に向けた CO2 削減・低炭素社会の実現に向けた動きは加速している。当社の強みである IH 熱処理は CO2 直接排出量がゼロで、環境負荷が少ないクリーンな技術であり注目が集まっている。本稿は IH 熱 処理技術を基盤とした当社製品の CO2 排出量削減の事例と、製品の製造過程における脱炭素に向けた取 り組み事例を紹介する。
 

②省エネに貢献する IH 用新型 PWM(パルス 幅変調)インバータの製品ラインナップ

石 間   勉 (いしま つとむ)

島田理化工業株式会社 生産本部 産業 IH 技術統括

要約 弊社ではすでに、誘導加熱(IH)用の高効率インバータとして低周波用の新型 PWM インバータ の販売を開始し、省エネ機器として順調に販売拡大中である。今回、高周波帯の用途に対して、最新の 高効率パワー半導体である SiC を採用し、FPGA による高速デジタル制御を駆使した「SCT-SW シリー ズ」として PWM インバータを開発・製品化した。これにより IH 用途のほぼ全周波数範囲を新方式の PWM インバータで製品ラインナップ化した。本 PWM インバータシリーズの市場投入により、製造現 場における金属熱処理の省エネ化に貢献していく。
 
EH_No244【特集】クリーンエネルギー開発・活用
【特別寄稿】①長距離ケーブル連系における高調波共振

浅 野 雅 彦 (あさの まさひこ)

日新電機株式会社 静止機器事業部 産業・海外技術部 主幹

要約 これからは、再生可能エネルギーの大量導入が進み、大規模な太陽光、風力、洋上風力発電所等 が今後増えてくるものと予想される。これらの発電所は連系する既存の電力供給設備(電力会社の変電 所等)から離れた場所に設置されることが多く、保守が容易で景観上の問題も少ない長距離地中ケーブ ル送電を採用するケースがある。一方、電力系統内に高調波が存在している場合や発電システム内のイ ンバータから高調波が発生していると、長距離地中ケーブルの対地静電容量と系統リアクタンスの共振 特性によってはこれらの高調波が拡大する可能性がある。本稿では長距離地中ケーブル送電系統モデル により、電力系統内に存在する高調波を対象にした共振拡大現象と共振を抑制する対策装置(高調波フィ ルタ)について解説する。
 
EH_No.242 【特集】第16回エレクトロヒートシンポジウム
①塗装設備におけるIH 導入のご紹介

菅沼 美智雄 (すがぬま みちお)

株式会社スガコーディングス 代表取締役

要約 塗装業界における工業用塗装工程の主流は未だに前処理から塗装、焼き付け乾燥設備が必要です。 総合的に省エネ、省スペース塗装設備をコーディネートした場合に、一番効率が悪いのは乾燥設備があ げられます。数十年以上殆ど変わっていない方式が取られています。ガス直火型か電気ヒーターによる 加熱(エネルギーコスト高)がありますがいずれにせよ乾燥炉炉体を温めて熱風を作りその中に塗装ワー クを 20 分から 60 分以上入れなければなりませんので非常に効率が悪い工程になります。また、大分昔 (5 ~ 8%)から効率が上がったとはいえ 15% ~ 20% あればいい方です。そこでワークに直接加熱する IH 誘導加熱方式(30% ~ 60%)を開発検討することになりました。特に厚物のワークや循環熱風炉で は温度が上りにくいワークには最適で有ります。塗装後、既存乾燥炉の手前の予備スペース(2 ~ 3 m) にも導入可能で直接加熱しますので炉体は不要です。既存生産ラインの効率アップ、(コンベアースピー ド up)がはかられ、導入費用、ランニング費用も熱風炉、遠赤近赤加熱炉方式より省スペース、省エネ 含め比較的安く導入出来る点が魅力であると考えます。
 
EH_No.239 【特集】電気加熱エネルギーにおけるシミュレーション技術の最先端

①Simcenter TAR-CCM+を用いた 電気加熱シミュレーション

佐 藤  誠(さとう まこと)

シーメンス PLM ソフトウェア CD 株式会社 カスタマーサポート本部 グループリーダー

要約 電気加熱は産業界で広く利用されている加熱方式である。電機加熱の適切な運用や制御には実験 的確認よりも、数値シミュレーションを利用した検討が事前に行われることが望ましい。さらに電気と 熱という観点から、シミュレーションでは熱流体と電磁場を一つのソフトウェアで連成解析できること が好ましく、本稿では連成解析に対応できる Simcenter STAR-CCM+ を用いた誘導加熱、プラズマアー ク加熱など電気加熱ソリューション事例を紹介する。

②密閉型誘導加熱撹拌翼の開発における 電磁界・熱流体解析シミュレーション

中 尾 一 成(なかお かずしげ)

福井工業大学 電気電子工学科 教授

柏 山 和 樹(かしやま かずき)

福井工業大学 研究員

竹 原 紘 史(たけはら ひろふみ)

三菱電機株式会社 静岡製作所

中 尾 総 一(なかお のぶいち)

関西電力株式会社 技術研究所 研究員

要約 現行の撹拌槽における加熱は化石燃料を燃焼させ、生成された蒸気や温水をジャケットやヘッダー に流して内容物を槽壁外部から加熱する外部槽壁加熱が一般的である。本稿で紹介する密閉型誘導加熱 撹拌翼は、撹拌翼の内部に絶縁された電磁誘導コイルを内蔵し、翼板を誘導加熱して内部から直接溶液 を加熱するという新コンセプトを有している。用途は化学工業・食品加熱向けなど多岐にわたると想定 している。本システムの導入は脱炭素化の流れの中、加熱プロセスにおけるエネルギー源を化石燃料か らグリーン電力へ転換できる、“カーボンフリー電化・撹拌システム”としての役割を担なうことができ ると考えている。以下ではその開発内容や、開発における誘導加熱撹拌翼の最適形状化のための有効な 設計支援ツールとしての電磁界・熱流体解析シミュレーション事例について紹介する。

 
EH_No.236  【特集】第15回エレクトロヒートシンポジウム

①省エネに貢献する誘導加熱用新型 PWM(パルス幅変調)インバータの開発・製品化

石 間  勉

島田理化工業株式会社 生産本部 産業 IH 技術統括

要約 誘導加熱(IH)は、家庭用の電磁調理器や IH ジャー炊飯器など社会に普及しており、同じよう に工場で使用される加熱装置に対しても IH を利用する取り組みが増えている。工場では機器の容量が 大きくなるため効率アップによる省エネ効果は電気料金の削減に直結する。IH 装置は周波数変換のため インバータが必要であり、今回紹介する新型インバータは、独自の PWM(パルス幅変調)技術により 約 95%の電源効率と約 95%の電源力率を達成している。本インバータでは、省エネ効果を発揮できる 並列共振方式を採用しており、独自の PWM 制御技術の採用により従来比(当社並列共振方式との比較) で効率を約 10%以上改善した。特に、直列共振方式を使った非磁性材のワーク加熱に比較して、最大で 約 30%の効率改善を達成している。
 
EH_No.228  【特集】省エネ・脱炭素を牽引する国の施策と補助金の活用

①船舶用あじろ鎧装電線乾燥ラインの省エネと品質維持の両立を目指したIH加熱コイルの導入

前原 進吾

ヒエン電工株式会社 執行役員 生産本部 本部長 長田野工場 工場長

大木 友和

ヒエン電工株式会社 生産本部 長田野工場 製造技術グループ 主査

中谷 真幸

関西電力株式会社 営業本部 エンジニアリンググループ 副長

 ヒエン電工株式会社長田野工場では、過酷な環境下で使用される船舶用電線の耐久性・防錆力向上を目的として、シース被覆上に鉄のメッシュ編組(以下、あじろ鎧装という)をして、塗装し乾燥を行っている。乾燥工程は従来より熱風で行っており、熱源には電気ヒーターを使用してきた。しかし、乾燥工程における電気ヒーターの消費電力量が工場全体の消費電力量の大半を占めており、課題となっていた。乾燥工程の省エネ化が求められる一方、塗装乾燥品質の維持には、季節変動に伴うあじろ鎧装表面温度の変化や電線径、電線加工速度に応じた精密な熱風温度調節が必要であり、電気ヒーターは温度制御性に優れていた。そこで、あじろ鎧装の自己発熱により加熱するためエネルギー効率が高く、インバータ出力変更による温度制御が容易なIH 加熱コイルの導入可能性を調査するため、試験を実施した。結果、試験条件における最適なインバータ出力を見極め、省エネと乾燥品質維持の両立を実現した。また、塗装前にもIH 加熱コイルであじろ鎧装電線を予熱することで、塗料塗布状態も向上した。本稿では、その試験結果について報告する。

 

EH_No.227  【特集】誘導ー産業における応用ー

①~総論Ⅰ~誘導加熱装置の基礎知識並びに加熱エネルギの考察

川西 啓二

株式会社三井E&Sパワーシステムズ 

TPE事業本部 玉野センター長

要約 誘導加熱装置が金属の加熱、溶解、熱処理に応用され、広範囲に普及され始めてから60 年程になる。その初期において、電源がパワーデバイス素子のサイリスタ式高周波電源に置換わり、誘導加熱装置の特長である省エネルギ、省力、コンパクト化等が最大限発揮できるようになったことが、誘導加熱の利用拡大へと繋がった大きな要因である。1970 年代のオイルショックを経て、省エネルギの機運が一層高まり、電源のみでなく誘導加熱装置の構成要素ならびに制御全般に渡って様々な省エネルギ対策が実施され、弛まぬ実績を積み重ねて今日に至っている。しかしながら、リーマンショック以降、エネルギ問題や二酸化炭素排出量の問題は地球規模でクローズアップされ、生産ラインの省エネルギ、小ロット生産、歩留まり向上を優先した生産形態へ移行し、従来よりも優れた加熱温度制御技術や高付加価値加熱技術が所望されている。本稿では、鍛造前誘導加熱装置のビレットヒータを例として、誘導加熱の基礎ならびに加熱エネルギに考察を加え、高効率で生産性向上に必要な加熱基礎技術との関連について紹介する。

 

②【総論Ⅱ】誘導加熱システムの最新動向

千葉 智滋、 清水 耕平

株式会社富士経済 

東京マーケティング本部

要約 誘導加熱は、エレクトロヒート技術の中でも金属加熱に用いられる技術であり、非接触・局所加熱・昇温時間が短い点などが評価されている。本稿では、富士経済が実施した誘導加熱業界の調査結果を元に、誘導加熱業界の業界構造・主要な用途と今後注目される用途について報告する。業界構造としては、装置メーカーが加熱源までを製造するケースが多く、導入用途による棲み分けや周波数帯・容量帯による棲み分けがなされている。注目される工程として、熱可塑型炭素繊維(CFRTP)成型における金型加温が挙げられる。

 

③誘導加熱装置における今後の動向について

 

 赤松 良昭(あかまつ よしあき)

 

富士電子工業株式会社

 執行役員 製造部 部長

要約 富士電子工業株式会社では誘導加熱を用いた加熱装置と加熱用電源の設計、製造、販売を行っている。誘導加熱の技術は古くからあるが、様々な改良を経て、現在では自動車産業をはじめ多くの産業で重要な技術として認識されている。本稿では弊社で開発した誘導加熱装置の紹介と誘導加熱用電源の現状と今後の動向、また最近話題となっているIoT やAI といった技術を誘導加熱装置にどの様に活用するのかを紹介する。

④小型高周波誘導加熱送致「MU-α」の商品紹介

高木 良道

SKメディカル電子株式会社

要約 1831 年にFarady(英)が「電磁誘導現象」を発見し、電磁誘導によるエネルギー変換について発表をおこない、これが誘導加熱の原理となった。我が国では1931 年に最初の工業用誘導炉として、電動発電機による300 kW、500 kg の高周波炉が作製され、その後も高出力化、高周波数化などの歴史を経て種々の産業分野で省エネルギー対策、生産コスト・環境負荷低減などを理由に採用されている加熱源といえる。しかし産業分野での使用を目的とした高周波誘導加熱装置は大型化し、それに伴い初期導入コストの面で研究・開発分野では他の熱源と比較し導入しにくい熱源となっている。そこで当社では、研究・開発分野であっても比較的簡単に導入できる小型装置の開発を目指した。本稿ではその装置である小型高周波誘導加熱装置「MU- α」について、特徴的な構造や機能について解説し、更に今後の装置開発における課題やその取り組みについて報告する。

⑤試験装置における誘導加熱について

飯野 仁司

富士電波工機株式会社 

技術部 部長

要約 産業の基盤を支えてきた鉄、アルミ、金銀銅などの金属素材は、複合化やファイン化により、さらに高機能化の発展を続けている。これらの素材は電磁波エネルギーにより急速な表面加熱や、局所加熱、さらには高純度の溶解を可能にしている。この素晴らしい誘導加熱を技術基盤とし、電界・電磁プロセッシングを融合し、素材加工をする立場になって、誘導加熱を利用した試験装置を供給することにより、様々な製造分野や素材研究分野に貢献することが可能である。

⑥誘偏心機構を有した誘導加熱システム

甲斐 浩之

電気興業株式会社 

高周波統括部 開発部 部長

要約 自動車や工作機械などの部品は、強度や耐摩耗性が必要なものが多数ある。炭素鋼などの金属部品に熱処理を施すことにより、強度や耐摩耗性等の性能向上が図れる。その熱処理の方法として、誘導加熱による高周波焼入れがある。誘導加熱は、加熱コイルと被加熱物の距離が近いほど加熱されやすく、遠いと加熱されにくい。加熱コイルの偏心機構を付け加えることにより、加熱コイルと被加熱物の距離を近づけることが可能となり、加熱効率を改善することができる。本稿では、加熱解析の温度分布の比較等を含め、ハブユニット外輪の高周波焼入れとコイル内径可変型(K-kahen)高周波焼入れを事例として紹介する。

⑦新型IH調理器[WANE COOKER®]

石間 勉

島田理化工業株式会社 

生産本部 産業IH技術統括

要約 IH 調理器は、誘導加熱(Induction Heating)を応用した製品であり、家庭用では既に広く普及しているが、食品製造工場についても量産ラインへの本格導入が始まっている。その理由は、加熱精度向上と省力化、作業環境の改善である。すなわち、クリーンで快適な作業環境の下、より良い商品の量産を目指している。量産ラインでは、生産性および品質面から食品鍋を連続搬送しながら加熱調理することが求められているが、従来のIH 調理器では食品鍋を連続搬送して加熱調理した場合に加熱コイル形状に起因して均一な加熱分布が得られないという課題があり、最適な加熱方法が望まれていた。今回、均一加熱が可能でかつ大型鍋に対応できる連続搬送用IH 調理器を開発、製品化した。調理工場で多数台並べて食品鍋を連続搬送させる場合に、各調理器の加熱度合いを調理に対応して集中コントロールでき、さらにロボットの活用も可能となっており、食品工場での省力化に十分に威力を発揮できる新型IH 調理器(WAVE COOKER®)である。

 

EH_No.224 (第13回エレクトロヒートシンポジウム)
誘導加熱導入による鋳造金型コーティングプロセスの革新と省エネ

出村  崇

本田技研工業株式会社 

鈴鹿製作所 エンジン工場 鋳造2 モジュール 技術主任

 電磁誘導加熱(以下「IH」という。)は、被加熱物を直接加熱できることから、産業用・業務用・家庭用に幅広く利用されている。本稿では、鋳造金型コーティング工程の加熱方式を非効率なバッチ炉での加熱方式からIH によるオープン式の連続加熱方式へ工法を変更したことにより省エネルギーと生産性向上を図った。従来電気炉では金型を外面から輻射熱により加熱していたのに対し、IH 装置は被加熱物自体を直接加熱できる特性を生かし、課題解決と省エネ、生産性向上が得られたことをここに紹介する。

 

EH_No.218 (第12回エレクトロヒートシンポジウム)
①過熱蒸気発生装置-UPSS-1200℃の水による熱処理革命

 

山村 佳彦

 

トクデン株式会社 京都営業課 課長

 家庭での調理用オーブンレンジに使用され、一般に知られるようになった過熱蒸気が、近年、セラミック部品の脱バインダー処理や錫めっきのリフロー処理といった工業用として用途が拡大している。過熱蒸気を工業用途に活用することで、熱風などでの熱処理に代わって更なる生産性、品質の向上が期待できる。今後ますます注目される過熱蒸気であるが、本稿では過熱蒸気の特長と高効率・高温・高精度な過熱蒸気を発生させることができる過熱蒸気発生装置UPSS(Utility Power Super Steamer)ならびに過熱蒸気の用途例について紹介する。

 

EH_No.212 (第11回EHシンポジウム)
①廃プラスチック処理装置への誘導加熱の採用事例

波田 圭太

電気興業株式会社 高周波統括部

 資源リサイクルがより一層重要になる中で、廃プラスチックは年間190 万トンがリサイクルされていない状況にある。リサイクルには各種方法があるが、その一つに廃プラスチックを化学的に分解して原料に再生するケミカルリサイクルがある。従来は熱分解槽を化石燃料で加熱していたが、温度ムラが多いことから化石燃料を無駄に消費してしまう欠点があった。今回、廃プラスチック熱分解槽のエネルギー源として、高周波誘導加熱により加熱する最適なシステムが阿部鉄工所に採用されたので、その概要を紹介する。

 

EH_No.206 (第10回EHシンポジウム)
高圧ボンベ製造工場への誘導加熱の導入事例と計測評価結果について

 

伊達 健太朗 昭和高圧ボンベ株式会社

 

井上 和茂 日本エレクトロヒートセンター

 

松田 勇 株式会社タイチク

 

 

 高圧ボンベの製造は、金属の加熱や熱処理を必要とするので、エネルギーを大量に使用する。本製造工程に誘導加熱炉を導入する事で、大幅な省エネルギーを実現するとともに、生産性や製品品質の向上、作業環境の改善を実現した事例を紹介する。また、誘導加熱炉の導入前後のエネルギー使用量等の計測評価を行い、誘導加熱炉の導入効果を定量的に明らかにした結果を紹介する。さらに、誘導加熱技術の概要や活用事例についても紹介する

 

EH_No.203 (連載講座 エレクトロヒート技術の歴史を振り返る)
誘導加熱技術の歴史

谷野 守彦

高周波熱錬株式会社

研究開発センター センター長付

 今ではあらゆる産業分野で広く利用されている誘導加熱(IH:Induction Heating)技術の変遷について振り返ってみる。筆者が入社する1978 年以前は他の文献をもとに述べ、それ以降は筆者の体験してきた範囲をもとに変遷を述べてみる。

 

EH_No.202(特集:最新の電気利用技術)
IH高温食品加熱機の開発

鈴木 勝利

株式会社カジワラ 執行役員 技術部長

菅野 啓治

関西電力株式会社 研究開発室 エネルギー利用技術研究所 

主任研究員

  食品工場では多くの食品が高温加熱調理されている。高温加熱調理の加熱源はガス燃焼加熱と電 磁誘導加熱(IH:Induction Heating)が主に使用されている。ガス燃焼加熱は燃焼装置が比較的簡便 で安価な利点がある反面、安全性と熱効率、制御性に難がある。一方、IHは、加熱制御性、対環境性能 が圧倒的に優れており、普及が進んできているが、加熱温度は250℃までに限られていた。250℃を超 える調理品目も多く、顧客からのニーズに答えるため、300℃で連続使用できる調理用IH技術を株式会 社カジワラと関西電力株式会社とで共同研究した。壁温300℃を超えるIH式高温食品加熱機「ハイパワー IH釜」として上市したので、開発技術の内容と調理への適用事例を紹介する。
 

 

 EH_No.201 高効率・省スペース鍛造前誘導加熱装置(コンパクトヒータ)の開発(第9回EHシンポジウム)
①高効率・省スペース鍛造前誘導加熱装置(コンパクトヒータ)の開発

小川 慎太郎

三造パワーエレクトロニクス株式会社 東響営業部 部長代理

  今回、ご紹介する鍛造前誘導加熱装置(コンパクトヒータ)は省エネルギーと小型化、そして市場価格に合った製品を目指し、コスト削減にも取り組んだものです。電源部に大容量IGBT 素子によるトランジスタ・インバータを新規採用することでスペースを削減、標準コンテナでの輸送ができるようにしました。また、トランジスタ・インバータの採用により、当社製品の従来方式インバータと比較して効率の高いヒータにすることができました。コストに関しても、従来のヒータに備わっていた機能は維持しつつも、全体の設計・製作、その他すべての見直しを行うことで、コスト削減することができました。その結果、高効率・省スペースのコンパクトヒータを実現することができ、当社の主力製品の一つにすることができました。 

 

 EH_No.200(特集:エレクトロヒートの未来を展望する)
誘導加熱の展望

 

林   靜 男

富士電機株式会社 中部支社

 

 

EH_No.194(特集:最新の電気加熱技術)

 

株式会社ウチノの高効率誘導加熱装置紹介

 

竹田  忍

 

株式会社ウチノ 技術部

 高効率誘導加熱装置は量産向けの自動車から少量多品種の建設機械用途など幅広い分野で利用さ れている。その容量範囲は100 kwから数千kwに至る。近年、高効率化で高精度化、コンパクト化に よる取り扱いの容易化を図りつつ、用途拡大を図ってきた。今回MW級のIGBT素子を用いた数百kw から3000 kwまでの高効率誘導加熱装置について紹介する。

 

②誘導加熱(IH)ろう付

 

加 藤   篤 

 

島田理化工業株式会社 販売事業部 参事

 ろう付には、火炎(ガス)・電気(抵抗・アーク・誘導)・光線(光ビーム、レーザー)・その他(拡散、 ディップ)様々な方式があり、それぞれの長所を生かしながら、自動車、車両等輸送機関係・クーラー・ 冷蔵庫用のコンプレッサーを中心とした家電関係・超硬チップ等の工具・機械関係等あらゆる業種にお いて使用されている。身近なところでは、メガネや自転車のフレーム、また歯科技工分野でも使用され、 一方大型部品では、航空機・発電用のタービンブレードやロケットエンジンの冷却ユニットの製造工程 にも使用されている。誘導加熱(IH-Induction Heating)を利用したろう付も銀ろう付を中心に古 くから製造工程の1つとして貢献してきたが、近年は家庭用のIH調理器の普及と伴に広く知られるよ うになり、金属の自己発熱による高効率・省エネルギー・省スペース・安全性・簡単操作というメリッ トから「環境に優しい加熱」として更に脚光を浴びている。今回はこの利点を生かした誘導加熱方法及 び将来像等について説明する。

     

EH_No.192(連載講座:電気加熱技術の基礎、特集:産業分野におけるエレクトロヒートシステムリニューアル事例) 
①誘導加熱の基礎と応用事例
魚住 敏治

 

一般社団法人日本エレクトロヒートセンター

 

誘導加熱技術部会 部会長
トクデン株式会社 取締役 総務部長

 火に始まる人類の熱利用の歴史は産業革命の時代に劇的に変化し、今日の豊かな社会を築く礎となっ た。特に電気エネルギーを効率的に活用した加熱であるエレクトロヒートは、燃焼式では不可能な高温 への対応や、省エネルギー、品質の向上、生産性の向上など、これからの生産現場に要求される魅力的 な可能性を秘めている。これらエレクトロヒートの基礎理論から事例までを加熱方式別に全6回シリー ズで解説する。

 

②鋼管の先端加熱への高周波誘導加熱装置の導入事例
今村  剛

 

株式会社タイチク 設計部次長

 鍛造加工前工程の加熱方式のひとつとして、誘導加熱があるが、その特徴として、(1)直接加熱 である。(2)急速加熱ができる。(3)エネルギー密度を高くできる。(4)制御性が良い。(5)炎が出な い。等が挙げられる。誘導加熱装置を新規導入する場合は勿論の事、他の加熱方式から、誘導加熱装置 へ置き換えを行う場合、その特徴から得られる利点に期待をされている。今回、鋼管先端加工の前工程 の加熱にガス燃焼炉を使用されていた御客様の設備を誘導加熱装置に置き換える機会を頂き、それによ り得られた省エネ効果が、御客様の満足を頂く事となったので本紙面を借りて、その結果について紹介 させて頂く。また、新設備の導入により得られた、作業工程の効率化、作業環境の改善についても簡単 に紹介させて頂く。

 

③IHと炉のハイブリッド加熱技術
田内 良男

 

島田理化工業株式会社

 

産業IH製造部産業IH開発課

 近年,IHによる急速な昇温の後に,炉による均一な温度保持をさせるハイブリッド加熱方式の採 用が急増している。本方式は,従来の炉のみの工程と比較して「急速加熱」,「省スペース」,「省エネルギー」 を実現し,しかも高い温度の均一性を得ることが可能である。IHでは,昇温は短時間で行うことができ るが高温のまま均一に保持することは難しい。一方,炉加熱では昇温を雰囲気温度からの間接加熱のみ で行うため緩やかに加熱され,昇温までに長い炉又は長い時間が必要となる。しかし,一定の温度に達 してしまえば高い均一性で温度保持を行うことができるという長所がある。以上のように,IH方式と炉 方式にも一長一短があり,互いの短所を補い,“急速加熱・高温保持・均一性”という特長を有するシス テムがIHと炉のハイブリッド加熱方式である。本稿では,ハイブリッド加熱方式の構成をテスト結果と ともに紹介する。

 

EH_No.188(特集:最新の電気加熱技術)  
①誘導加熱を利用したコーティング技術
竹屋 昭宏

 

第一高周波工業株式会社

 

技術部 技術開発部長

 金属部材におけるコーティングにおいて、高機能材料である自溶合金の被覆に誘導加熱を利用し た方法を紹介する。自溶合金特有の処理である皮膜の緻密化などによる高品質化を目的としたフュージ ング処理において、一般的なガスフレームによる方法と比較して、高安定性、高品質な誘導加熱を利用 した「高周波フュージング」は、高加熱効率、低気孔率、厚膜化可能などの特長を持つ。この高周波フュー ジングと高周波曲げ加工を同時に行うことで、安定的な曲げ製品を製作可能であり、一例として過炉器 管へのコーティングを紹介する。また、自溶合金被覆で用いられる溶射法では施工困難な、小径管の内 径への自溶合金被覆を実現した製品実例を紹介する。

 

EH_No.174(特集:誘導加熱システム)
電磁誘導ー変圧器と誘導加熱

 

谷野 守彦

 

高周波熱錬株式会社 

 

研究開発本部

 誘導加熱は、電磁誘導原理「ある回路に誘導される起電力e は、その回路に鎖交する総磁束Φが時間的に変化する割合に等しい。e = n × d Φ /dt(n:ターン数)」を利用している。変圧器と同じ原理とはいうものの、誘導加熱コイル& ワークの外見・挙動とはいくつもの違いがみられる。最初にいわゆる通常50 Hz/60 Hz 用鉄心入変圧器の基本式を示し、その後誘導加熱電源装置にも使われている様々な変圧器を紹介する。最後に加熱コイル& ワーク部と比較して、共通する考え方・挙動の違いを説明していく。