電磁波加熱の原理
樹脂や木材などの電気不良導体(誘電体)は、電界内に置かれると内部に電気的平衡状態からの歪みである分極を発生します。誘電体に高周波電圧を加えると、誘電体内に発生した双極子は反転して周囲の分子との間で摩擦を起こし、その結果、摩擦によるエネルギーは誘電体内で熱となります。この誘電損失によって発生した熱によって誘電体を加熱する方法を誘電加熱といいます。
マイクロ波加熱は、誘電体に電磁波を照射して分子の振動を起こします。一方、高周波誘電加熱は、お互い向かい合った電極の間に高周波電界を作り誘電体を置いて分子の振動を起こします。従って、誘電体に金属片の混入があったり、平行板電極の間隔を極端に狭めたりすると放電することがあるので注意が必要です。
また加熱電源の周波数により、図2に示すマイクロ波オーブンのような放射電界の変化を利用するマイクロ波加熱と、図3に示すような並行する電極間の電界を利用する高周波誘電加熱に分類され、前者は通常2450MHzを、後者は4~80MHzの周波数を使用します。
≪参考≫
マイクロ波加熱方式は熱伝導などの助けを借りずに加熱できるため、それが大きな特長になっていますが、ほぼ均一に加熱できる被加熱物の厚さの目安には、照射された電磁波の電力密度が半減する距離D(電力半減深度)が使われます。通常2~2.5D程度の厚さであればほぼ均一に加熱されると考えてよく、電力半減深度Dはおおよそ次の式で表されます。図は周波数f=2,450MHzの時の電力半減深度を示したものです。