日本エレクトロヒートセンター

>
>
>
技術文献

 

技術文献

 

【機関誌「エレクトロヒート」記事】

機関誌のご案内

EH_No251【特集】工業炉(熱処理)の電化について考える
渡 邉 規 寛(わたなべ のりひろ)一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター 企画部 部長
要約 カーボンニュートラルの切り札とされている電化。しなしながら産業分野の電化に向けたプロセ スは、長く険しい山登りとなっているのが実情。そこで改めて産業電化とカーボンニュートラルとの関 係性・役割、産業電化における課題整理(昨年度の調査結果)、更なる取り組みなどについて紹介し、工 業炉(熱処理含む)における、電化普及の一助として活用頂けるよう、本特集を企画しました。
清 水 耕 平(しみず こうへい) 株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 課長
八 浪 佑 亮(やつなみ ゆうすけ)株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 AD
要約 カーボンニュートラルに向けた工業炉の電化について、電化事例および、関係者ヒアリングによ る工業炉種別の現状と電化の方向性を整理した。電化事例調査では、鋳造向けの誘導溶解炉やアルミ溶 解炉の保持炉や溶解保持炉、表面熱処理炉の真空浸炭炉や光輝焼鈍誘導加熱の電化事例が主に公表され ていた。関係者ヒアリングを元にした電化の方向性では、鉄鋼溶解炉、アルミ溶解炉、鉄鋼加熱炉、一 般熱処理炉、表面熱処理炉を対象に調査し、アルミ溶解炉、アルミ熱処理炉、浸炭炉にて電化の進展が 有望視されるとの結論を得た。また水素転換の可能性について、コストおよび品質の課題が明確となった。
加 納 利 行 (かのう としゆき)  富士電機株式会社
高 橋 良 治 (たかはし りょうじ)一般社団法人日本工業炉協会
加 藤 健 次 (かとう けんじ)   一般社団法人日本工業炉協会
要約 工業炉は、鉄鋼、自動車、電気、電子、窯業、化学 工業等の多くの産業分野において、各種の原材料を加 熱、熱処理するために必須な設備である 1)。わが国の 工業炉の消費エネルギーは、国内全体の約 15%を占 めており、2050 年のカーボンニュートラル社会構築 を目指す上で、工業炉の取り組みは極めて重要である。本報では、工業炉のカーボンニュート ラルに向けた電化のポテンシャル及び今後の課題につ いて述べる。
山 口   剛 (やまぐち たけし)三建産業株式会社 営業本部 本社営業部 部長
要約 工業炉が消費するエネルギーは、日本全体のエネルギー消費量の 15%に相当し、その温室効果ガ ス排出量は、日本全体の 12%を占めていると見積られている。三建産業株式会社は、2022 年度中期経 営計画に「競争力ある脱炭素工業炉メーカーになる」という柱を掲げ、2030 年までに当社の工業炉か ら排出される二酸化炭素を 50%削減するという目標とし、工業炉のエネルギー削減・電化推進・燃料転 換・老朽化更新に積極的に取り組んでいる。当社が設計、製造した抵抗加熱式工業炉には、台車移動式、 炉体移動式、回転炉床式などがあり、主に素形材の加熱および熱処理に使用されている。本稿では、当 社が現在まで納入してきた抵抗加熱式工業炉の概要、採用実績など紹介する。
倉 田 征 治 (くらた せいじ)メトロ電気工業株式会社 技術開発課 課長
要約 経済産業省では工業炉のカーボンニュートラル化推進のため、アンモニアや水素による燃焼や、 電磁誘導などを活用した電化を推進している。しかしながら赤外線加熱活用は検討されていない。クリー ンで、取り扱いも容易、高効率、低温温度帯では活用されている赤外線加熱技術が検討されていない理 由は、現行電化できていない工業炉はより高エネルギーが必要であり、従来の赤外線加熱技術では出力 が不足していたためである。また電気を使って発熱し、そこからの熱放射を利用する赤外線加熱技術は、 たとえ実現できても効率が悪いとも考えられていたことも理由にあげられる。しかしながら、昨今の赤 外線技術はより高出力となっており、また放射加熱を工夫することによって高効率化させ、省エネ性も 実現させることが出来る。本研究では、あらたな赤外線技術によって従来加熱できなかった温度領域に ついて試験し、そこから得られた知見を概説する。
 
[特別企画]カーボンニュートラルに貢献する電気ボイラー
西 岡 茂 昭 (にしおか しげあき)三浦工業株式会社 営業推進部 部長
要約 カーボンニュートラルに向けて産業熱の脱炭素化は重要で大きな課題となっている。従来は試験 設備やサウナ等の少量の熱源使用で使われていた電気ボイラが、「熱源のカーボンニュートラル化」とし て注目され、産業熱としての需要から複数台設置等による大容量化対応が始まっている。ミウラでは長 年の電気ボイラ製造・メンテナンスノウハウと小型貫流ボイラで培った台数制御システム等より、この ような需要家ニーズに応えつつ、産業熱の脱炭素化に貢献していく。
田 中 紀 幸 (たなか のりゆき)日本電熱株式会社 産機事業部 事業部長
要約 脱炭素社会実現に向けて「産業の電化」、「ボイラーの電化」を進めるにあたり、「省エネ」、「エネ ルギー転換」など重要と考えられる方向性を示し、その方向性に関してボイラーでの事例を挙げながら 詳細を説明する。加えて蒸気ボイラー利用の具体例を示しながら、現状露見している課題・問題点を明 らかにし、それに対する電気ボイラーの活用、熱源の転換などを提案する。また、弊社の電気ボイラー 製品に関して仕様・用途等を併せて紹介する。 
 
EH_No248【特集】第17回エレクトロヒートシンポジウム

①ガス窒化雰囲気制御システム「NITRONAVI」 とその適用事例について

平 岡   泰 (ひらおか やすし)パーカー熱処理工業株式会社 技術本部 部長

要約 パーカー熱処理工業㈱の制御ガス窒化・軟窒化処理システム「NITRONAVI」の設備、雰囲気の制御原理、またその利点を概説する。制御ガス窒化・軟窒化処理をする最大のメリットは表面相制御による機械的特性の改善である。目的に応じて鋼表面を化合物層レス、γ’ 相、またε相へ選択的に制御することによって耐疲労性や耐摩耗性の改善が可能である。本稿では、いくつかの機械試験結果を例にその効果・メカニズムも説明する。さらに、生産上の利点として、窒化時間の短縮やアンモニアガス使用量削減が可能であり、当社で実施したいくつかの例を紹介する。

 
EH_NO.245【特集】カーボンニュートラルに貢献する電気加熱技術

①ホットプレスを用いた拡散接合プロセスの 開発

中野渡  功 (なかのわたり いさお) 株式会社 IHI 機械システム 新事業推進部 主査

小 西 博 之 (こにし ひろゆき)  株式会社 IHI 機械システム 新事業推進部 主査

河 合 拓 也 (かわい  たくや) 株式会社 IHI 機械システム 新事業推進部

要約 脱炭素社会に向けて、個々の機能を損なわずに全体として新しい機能を発現させる材料の需要の 高まりから、精密接合、異材接合が可能な“拡散接合”が近年注目を集めている。当社では 40 年近く 前から、拡散接合用途のホットプレス装置を提供してきた。1 軸のワークゾーンとして(L)500×(W) 500×(H)500 サイズを基本とし、均熱性と均圧性を確保したまま生産性を向上する装置改良、および プレス軸数を増やして生産性を向上させた多軸炉や連続炉の提案等を進めている。また、装置提案と合 わせて、接合品質を担保したまま条件緩和できる接合プロセスならびにタクトタイム改善の提案を行な うことで、脱炭素を睨みながら、お客様に最適なソリューションを提供している。
 
EH_NO.242【特集】第16回エレクトロヒートシンポジウム
馬塲 康輔(ばば こうすけ)
株式会社ヤマト 鋳造事業部
要約 アルミダイカスト工場の鋳造プロセスで用いられるアルミ溶解保持炉や溶湯保持炉では熱源とし てガスバーナーが多く用いられているが、排出される CO2 排出量やエネルギー消費量が大きいことが課 題となっている。そこでガスバーナーに代わる熱源として電気加熱を用い、コンパクトで高出力な高効 率ヒーターを中部電力ミライズ株式会社と共同で、独自の特殊技術を用いた製品開発に成功した。本ヒー ターを活用しアルミ鋳造における省エネルギー化や CO2 排出量削減への取り組みについて紹介する
 
EH_NO.241【特集】業務用電化厨房施設の省エネ
①冷凍食材を短時間で美味しく解凍できる高品質自動解凍機「Sassa」(サッサ)の開発

森  秀 樹 (もり  ひでき)中部電力株式会社 先端技術応用研究所 研究主査

長   伸 朗 (おさ のぶろう)中部電力株式会社 先端技術応用研究所 研究主査

要約 冷凍食材は、急激に温めて解凍すると細胞から旨み成分が抜けだし品質が劣化するため、冷蔵庫 で 1 日程度の時間をかけて解凍する「冷蔵庫解凍」が一般的であった。その他に、短時間で解凍する方 法として電磁波や流水を使う解凍方法があるが、解凍ムラの発生や衛生管理が難しい等の課題があった。 さらに、2021 年からは食品衛生法が改正され HACCP※に対応する衛生管理も求められるようになった。 そこで、衛生的で拡散性の良い蒸気由来のミストを利用し、冷凍食材の解凍条件(ミスト気流の温度・風速) を最適化することによって品質を保持し、HACCP 対応機能を有した短時間解凍が可能な「高品質自動 解凍機(商品名:Sassa(サッサ)」を株式会社菱豊フリーズシステムズと共同で開発した。
 
EH_NO.240【特集】環境に配慮した省エネ技術の取り組み

①電熱スクリュ式炭化炉を用いた 汚泥燃料化技術のご紹介

竹 田 尚 弘(たけだ なおひろ)

株式会社 神鋼環境ソリューション 技術開発センター 技術開発部 資源循環技術室 課長

要約 令和 3 年 5 月に閣議決定された第 5 次社会資本整備重点計画では、下水道バイオマスリサイクル 率や下水道分野における温室効果ガス排出削減量に数値目標が設定された。当社では、このような社会 ニーズに応えるため、カーボンニュートラルによる温室効果ガス排出削減の手段として下水汚泥のエネ ルギー利用を目的に、「電熱スクリュ式炭化炉を用いた汚泥燃料化技術」を開発し、本技術が安定した発 熱量の汚泥燃料を製造でき、かつ省エネルギー化が可能となる技術であることを確認した。なお、本技 術は日本下水道事業団の新技術 I 類に選定された技術である。

 
EH_NO.239【特集】電気加熱・エネルギーにおけるシミュレーション技術の最先端

①シミュレーションソフトを用いた熱解析技術と熱処理装置の設計事例

村 上 貴 洋(むらかみ たかひろ)

株式会社リケン環境システム 熱エンジニアリング事業部

要約 株式会社リケン環境システムは、金属ヒータ(商品名:パイロマックス(Pyromax)、使用目安 1200℃まで)と、セラミックヒータ(商品名:パイロマックススーパ(Pyromax-Super)、使用目安 1700℃まで)を製品ラインナップしており、家庭用電熱器具から超高温の工業炉まで幅広いニーズに対 応している。また、ヒータを搭載した装置(工業炉)を製造・対応するエンジニアリングメーカの側面 もあわせ持つ。つまり、ヒータメーカでありながら工業炉を中心とした装置メーカという「ハイブリッ ド技術」を兼ね備えているのが、当社の特徴・特色である。本稿においては、当社のシミュレーション ソフトを用いた熱解析技術と、これによる熱処理装置の設計事例を紹介する。

 
EH_NO.236(第15回エレクトロヒートシンポジウム)

①茹で釜の自動制御による省エネルギーの 取り組み

恩 田  茂

中部電力ミライズ株式会社 法人営業本部 法人営業部 課長

要約 店内製麺のうどん店を全国展開する同社が、エネルギーの「見える化」や熟練職人の経験による 作業の標準化と自動化に取り組み、省エネが進みにくい飲食業界において、エネルギーの大幅な削減を 達成した先進的な取り組みである。具体的には①店舗の用途別時間帯別、②麺匠と、最適な塩分濃度、 最適沸騰状態等必要要素を数値化。さらに茹で釜の立ち上げ時・閑散時の投入電力パターン、さし湯量を、 匠の視点から数値化し制御ロジックを確立、③需要予測による運転モード策定、④自動制御化装置によ る 3 モード(On,Off,Full Power)運転ができる茹で釜の開発。これら一連の取り組みの結果、電力 使用量 36%削減、3 店舗合計の年間節電量は 13 万 kWh とした。

 
EH_NO.231(製造プロセス改善特集~省エネ脱炭素・品質や生産性向上への挑戦)

①和菓子の焼成工程において過熱蒸気を活用 焼き色や美味しさ、食感の向上を実現

坂口 勝俊
一般社団法人日本エレクトロヒートセンター
要約 株式会社お菓子の香梅では、家庭用の家電製品では先行していた過熱蒸気について、工場への 適用可否を以前から検討していた。こうした中、阿蘇郡西原村において 1984 年に建設された工場は、 2016 年の熊本地震で被災し、新しく工場を建て替える計画が浮上した。パイ饅頭ラインである連続式 トンネルオーブンの更新時には、従来の遠赤外線や熱風に加え、温度制御性に優れる電気を熱源とした “過熱蒸気発生ユニット”を新たに導入。過熱蒸気で満たされた炉内は、酸素濃度の低い空間を確保する ことができ、バターなどの酸化防止につながったとともに、きめ細やかな温度制御が為された過熱蒸気 が仕上げの焼成工程の熱源に新たに加わったことにより、焼き色や美味しさを向上させ、焼き立てのサ クサクした食感が長続きするようになった。

 

EH_NO.226(電化シフト/熱利用分野の脱炭素化に向けて)

①超高速昇温コンパクト炉“HD サーモジェネレーター” の開発

長  伸朗

中部電力株式会社 

技術開発本部 エネルギー応用研究所
生産技術グループ 基礎技術チームリーダー 工学博士

要約 自動車工場などでエンジン部品や構造部材等の金属やCFRP などの製品を加熱する工程において、従来は大型のバーナー式雰囲気炉で長い時間をかけた加熱が必要であり、時間の短縮や省スペース化が求められていた。また、赤外線式やIH 式などで短時間に加熱できる方法では、製品に温度の不均一が生じ、製品の不良に繋がる場合があることが課題であった。このため、加熱時間の短縮と温度不均一の解消を両立できる技術が求められていた。そこで、過熱水蒸気や熱風といった400℃程度の高温流体を用いて、金属やCFRP などを短時間で均一に加熱できる世界初の技術を開発した。

特別寄稿;電気ボイラの導入事例(課題と実施例)

日本電熱株式会社

技術部 部長 田中 紀幸

技師長    田中  賢

要約 昨今、ボイラの運用は多岐にわたり様々な分野で使用されている。但し実際の現場でどのように活用されているかは、企業の工程ノウハウや納入先との守秘義務等でなかなか知る事が難しくなっている。その中で弊社にはお問い合わせと言う形で様々な企業から課題の提示を頂き、製品として納入する事で解決をする機会を頂いている。本稿は実際の導入事例を紹介する中で電気ボイラの導入の利点やポイント、活用に関して紹介する。

 

EH_NO.224(第13回エレクトロヒートシンポジウム)

①電気式アルミ溶解保持炉「S-MIC®」の技術の現状と展望

岸村  司

三建産業株式会社 

開発本部 本部長

要約 自動車の軽量化ニーズに相応してアルミニウム合金の種類が多様化し、機側溶解保持炉の需要が増加している環境で、当社は、2010 年に、これまでに無い溶湯循環機能を持つ浸漬溶解式機側溶解保持炉「S-MIC」の販売を開始した。この「S-MIC」が稼働開始から8 年以上が経過したので、現時点で当初の設計コンセプトの妥当性と現状について実機を評価した。また、同じ基本コンセプトを維持しつつ、新しいタイプの炉「S-MIC Ⅱ」を提案した。ここでは、それらの技術の概要ならびに今後の展望について紹介する。

 

 EH_NO.221(特集:エレクトロヒートの基礎を支える抵抗加熱システム) 

普及が進む抵抗加熱システム -抵抗加熱の基礎・工業加熱炉への応用についてー

大浜 聖

株式会社サーマル 取締役営業部長

一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 抵抗加熱技術部会 部会長

要約 エレクトロヒート(電気加熱)技術の一種である抵抗加熱は、一般家庭では電磁波、IH、カセットコンロにおされて少なくなってきているが、産業分野ではいまだに最も普及している加熱方式である。
抵抗加熱については、安全性、職場環境改善、制御性、精密性、雰囲気技術等において燃焼加熱と比較されることが多い。もちろん燃焼加熱(火炎)との比較した優位性についてであるが、近年では燃焼加熱よりも同じエレクトロヒート技術である誘導(IH)、赤外・遠赤外、電磁波(マイクロ波・高周波誘導)加熱との比較をされることが多くなった。それだけエレクトロヒート技術の普及が促進されて来ていると言える。本稿では抵抗加熱システムの適用用途や市場規模のほか、オーソドックスで単純ではあるが、応用例が多数あり、多様な技術の組み合わせである工業炉・金属熱処理炉を中心に抵抗加熱システムの概要を記述する。

 

②抵抗加熱技術の最新動向と業界構造の特徴

千葉 智滋、清水 耕平

株式会社 富士経済 東京マーケティング本部

要約 抵抗加熱は、エレクトロヒート技術の中でも最も普及している技術であり、幅広い用途において使用されている。本稿では、富士経済が実施した抵抗加熱業界の調査結果を元に、抵抗加熱業界の業界構造・主要な用途と今後注目される用途について報告する。業界構造として、ヒーターメーカー・装置メーカーに大別することが可能であり、導入用途による棲み分けやヒーターメーカー毎の得意領域等による棲み分けも可能である。注目される工程として、浸炭工程では、真空浸炭工程向け熱源として抵抗加熱への期待が高まっており、エレクトロヒート技術の代表的な加熱方式として、今後の発展が期待れる。

 

③小型・高耐久・長寿命ヒーター「高温流体加熱器」の開発

加島 裕次

株式会社加島 代表取締役社長

要約 温暖化対策・省エネルギー化の推進や生産設備の制御性向上へのニーズの高まりから、熱を必要とする様々な用途で、燃焼を伴うガスバーナーに代わり電気ヒーターによる加熱方式の採用が増えている。さらに、最近では、生産設備のコンパクト化や高性能化が進む中で、それを支える技術の一つである電気ヒーターも生産設備に応じた改良が求められる。このような背景を踏まえ、従来のヒーターに比べて、小型・高耐久・長寿命の電気ヒーター「高温流体加熱器」を開発した。本ヒーターの基本性能や特性、従来品と比べたメリットなどについて紹介する。

 

④高性能ヒーターを活用した省エネルギーと工場環境改善への取り組み

平田 享寛

株式会社ヤマト

鋳造事業部 営業技術課 課長

要約 地球環境問題への対応に伴い、国内の製造工場では使用されるエネルギーの省力化と排出されるCO2 の削減への取組みが積極的に進められている。これに鑑みて株式会社ヤマトは国立研究開発法人産業技術総合研究所および中部電力株式会社と共同で、独自の特殊技術を用いた高性能ヒーター「ALHYPERE X ( アルハイパー・エックス)」の製品開発に成功した。現在、本ヒーターを活用し、国内のアルミ鋳造工場における省エネルギー化や省スペース化およびCO2 削減への取組みを行っている。ここでは高性能ヒーターの説明および高性能ヒーターを活用した環境改善の取組みについて紹介する。

 

⑤現場にも環境にもやさしい真空浸炭炉
堀    哲

大同特殊鋼株式会社 機械事業部 設計部 真空設備設計室 室長

要約 大同特殊鋼(株)(以下、当社という)がドイツALD 社から基本技術を導入した真空浸炭炉「モジュュールサーモ」は発売から13 年が経過した。これまで当社が一貫して主張を続けてきた省エネ・省人化やスキルフリーといった導入効果が顧客の支持を獲得、グローバルの浸炭室の累積販売室数は600室を超えて、当社機械事業部の主力商品に成長した。2013 年には小ロット化・インライン化を指向した新商品「シンクロサーモ」もラインアップに加わって、多様化する顧客ニーズに応えている。本稿では、あらためて当社製真空浸炭炉の概略を振り返るとともに、実際に真空浸炭炉を導入した顧客の期待効果を整理することで、わが国のものづくり現場における真空浸炭炉の将来を展望する。

 

⑥熱可塑性CFRP の通電抵抗加熱金型による成形技術

吉田  透

株式会社キャップ 開発部 部長

要約 プラスチック成形や熱可塑性CFRP 成形の分野では、成形サイクル中に金型の温度を変化させて成形品の品質向上を図る試みがあり、ヒートアンドクール金型技術と呼ばれている。従来は熱源として温水や水蒸気、高温の油、カートリッジヒーターなどが使われてきた。これらの従来技術では短時間で金型を加熱することが難しく、熱エネルギーが外部環境に漏れてしまいエネルギー効率が悪いという問題があった。筆者らは金型に高周波電源を接続して、金型を電気抵抗で発熱させる方法を開発した。高性能な高周波電源を用いること、金型自体が電気抵抗で発熱することなどにより効率の良い金型加熱システムとなっている。この通電抵抗加熱金型を用いた熱可塑性CFRP の成形技術を紹介する。

 

⑦プリンター技術と加熱素子

海江田 省三

株式会社アフィット 代表取締役

要約 当社は産業用プリンター技術を研究開発、製品化している企業でレーザープリンター技術やインクジェットプリンター技術をものづくりの製造装置として利用出来るように製品提供している。プリンター技術を利用して毎ページごと可変情報プリントすることで、必要な時に必要な枚数だけ印刷可能とするいわゆるオンデマンド印刷はプリンター技術の得意とする世界で版レス印刷が可能にできる。ここでは当社の開発した特殊小型プリンターを利用してフィルムシートヒーター形状を自由に設計し、試作することが可能となった。本プリンターとフィルムヒーター製作応用の紹介と、3D プリンター向け加熱素子として開発中の500℃まで加熱可能なホットエンドの2 つの話題を紹介する。

 

多点ヒーター電力最適化制御―インテリジェント制御出力分配器(IOPD)―

付   思

理化工業株式会社 営業技術部 営業技術課 専門課長
北田  豊

理化工業株式会社 商品企画部 専門部長

要約 近年、工場設備の多様化に伴い電源設備の増設、電源品質向上(フリッカー、高調波抑制、ピーク電力抑制)の必要性が高まっている。お客様のニーズに対応すべく、IOPD(Intelligent OutputPower Distributor)を開発した。IOPD は、半導体製造用制御装置、樹脂の射出成形機、押出機および基板ハンダ付け装置など産業機械に組み込まれた、複数のヒーターを使用した装置において、ヒーター出力(電力)の重なりを最適化することで瞬時ピーク電力を抑制し電力の安定化を実現した。これによって力率の向上、高調波の抑制、消費電力の上限設定することが可能になる。本誌では、IOPD の技術内容と採用実績を中心に紹介する。

 

EH_NO.212(第11回エレクトロヒートシンポジウム)

①液糖貯蔵タンクへの自己制御型ヒータの導入事例

山下 慶一郎

株式会社 テクノカシワ 常務取締役

 本稿ではスプーン印で有名な砂糖業界トップシェアの三井製糖株式会社神戸工場殿で採用された、自己制御ヒータによる液糖貯蔵タンクの温度保持について紹介する。従来蒸気による温度保持にて製造管理をされていたが、液糖工程の出荷にて結晶化によるストレーナに詰まりが発生し、出荷に費やす時間が長いという課題があった。液糖を35℃で貯蔵する為に、貯蔵タンク内外に蒸気温風を送風していた事により、液糖表面で結晶化が発生していた事が原因だった。そこで自己制御型ヒータによる温度保持を採用したところ、結晶化の問題が解決され出荷時間の短縮とともに、ストレーナの詰まりの解消、一次エネルギーの削減、微生物リスクの低減へと繋がった。

 

EH_NO.207(特集:農林水産業/6次産業化)

①イチゴ植物体局所加温ヒーターによる省エネルギー栽培実現に向けた取り組み

鶴山 浄真

山口県農林総合技術センター 農業技術部 園芸作物研究室 専門研究員

要約 イチゴのハウス栽培における省エネ暖房技術としての、電気加熱技術の応用事例について紹介する。イチゴのハウス栽培で冬季安定収量を得るには、ハウス内温度を8℃~10℃以上とする暖房が不可欠であるが、イチゴ植物体の温度感応性が高い株元クラウン部のみを加温し、ハウス全体の暖房温度は下げる省エネルギー暖房技術が開発された。そこで、本技術を生産現場に導入し易くするために開発したのが局所加温用電熱ヒーター「クラウンヒーター®」である。本ヒーターをはじめとした複数技術導入によるイチゴの省エネルギー栽培技術の開発に取り組み、従前栽培技術に対して、同程度以上の収量を確保しながら、最大9 割以上の暖房用燃油使用量削減、暖房運転費の5 割削減が可能となった。

 

EH_NO.204(特集:ホットスタンピング技術)

ホットスタンピングラインの現状と課題

藍田 和雄

AP&T 株式会社 代表取締役

要約 欧州の自動車業界を中心に2000年中期から本格的に使用されているホットスタンピング技術が 日本でも2010年頃から本格的に導入検討されてきている。これは欧州における二酸化炭素排出規制が 2020年から罰則も含めて本格的に施行され、また米国における衝撃安全性も近年厳しくなっている現 状に合わせたものである。日本市場においても近年衝突回避機能の付いた乗用車の販売が一般的になり、 それと同時に衝撃安全性の向上も求められてきている。ここでは、ホットスタンピングラインの現状・ 導入状況と課題について述べる。

 

直接通電加熱技術・装置の開発とホットプレスへの応用
高周波熱錬㈱ 研究開発センター 大山 弘義

高周波熱錬㈱ 研究開発センター 生田 文明

要約 直接通電加熱(DH:Direct Resistance Heating)は、エネルギー変換効率の良さ、短時間加熱、高制御性、コンパクトな装置等の特長を活かした加熱システムで、弊社では高強度PC 鋼棒の連続加熱装置に使用している。近年、自動車業界では、低燃費化への強い要請に対し車体用鋼板の高強度(ハイテン)化による軽量化が重要な開発課題となっており、その解決方法にホットプレスがある。弊社では、自動車用鋼板のホットプレスの加熱に適用可能なDH 技術および装置の開発を実施しており、今回、移動電極DH システムを開発した。このシステムによって、より幅広い用途で、より環境に優しくかつ効率の良いDH による“矩形及び非矩形”薄鋼板の短時間加熱が実現可能になった。現在、それを利用して、形状や断面積がより複雑に変化する薄鋼板のDH 技術・装置の開発を進めており、ホットプレスによる自動車用ピラーやフレームなどへの適用開発と実用化を目指している。 

 

ホットスタンピングにおけるプレス工法

網野 雅章

株式会社アミノ 代表取締役社長

村井 裕城

株式会社アミノ 開発室 主任

要約 自動車の安全性と燃費向上の要求が高まるなか、高強度で軽量化が見込めるホットスタンピング 成形法が注目されている。ホットスタンピング成形法においては、鋼板の加熱技術が要求されるとともに、 焼き入れを行うための急冷技術も要求され、様々な手法が活用されている。本稿では、ホットスタンピ ングに関する紹介をしながら、省エネ性に優れたプレス機と鋼板の加熱/冷却装置について紹介する。

 

EH_NO.202(特集:最新の電気利用技術)
①SiC(炭化ケイ素)ヒーターを用いた取鍋電気加熱装置(エレマックス)の開発と導入事例

伊藤 正晴  

日本ルツボ株式会社

要約 鋳造現場で用いられる取鍋は一般的にガス、油等をバーナーで燃焼させ加熱させており、多くの 場合、温度管理されておらず一定時間バーナーを燃焼させ受湯前の予熱としている。燃焼方式の利点と しては比較的バーナーが安価であり、装置としては燃料とバーナーが用意出来れば容易に加熱が行える 反面、欠点として、騒音、 燃焼排熱による現場環境の悪化があげられる。これらのことより比較的容易 に高温が得られやすいSiC(炭化ケイ素)ヒーターを用いて、バーナーの欠点である環境問題を解消し た上で加熱コストも低減できる取鍋電気加熱装置(エレマックス)の開発を行った。

 

 EH_NO.200(特集:エレクトロヒートの未来を展望する)
①抵抗加熱技術の高度化への取り組み

楳 澤   勲

 株式会社 リケン環境システム 熱エンジニアリング営業技術部

 

EH_NO.197(特集:部品・製品への熱処理技術)
① 電気加熱式連続炉によるステンレス製品の光輝熱処理

大浜 聖

株式会社サーマル

取締役 営業部長

要約 ステンレス製品の熱処理には様々な加熱源が利用されている。職場の環境問題、価格低減のための工程削減、高度化する加工技術等により精度の高い制御が要求されている昨今では電気加熱が多く採用されている。電気加熱の優位性と連続加熱設備の特徴を明確にするため、あまり知られていないステンレス製品の熱処理を中心にステンレスパイプ用設備納入実績を交えて、水素系ガスを利用した光輝焼鈍設備をまとめてみました。

 

EH_NO.176(特集:抵抗加熱システム)
抵抗加熱の基本と解析事例  

田仲 功

株式会社リケン環境システム

熊谷事業所 取締役
熱エンジニアリング部 部長

要約 低炭素社会のグローバル化を実現するために、リケン環境システムはEco Thermal Technology (エコ・サーマル・テクノロジー:ET2)を展開・推進します。抵抗加熱分野において、最新の熱流体解析技術や材料に関する基礎技術と加熱装置のノウハウを駆使することにより抵抗体(発熱体・ヒーター)とワークのマッチングを最適化し総エネルギー効率の向上を図るものです。 その結果を定量的にCO2 や、エネルギーコストをどの程度削減出来るか、スペースはどうか、温度分布の性能は期待される範囲内か等を数値化し提案していくものです。

 

最新の小型面状ヒーターの適用・応用事例

菊池 荘員

坂口電熱株式会社

ビジネスセンター 経営戦略室 広報課
シニアアドバイザー 独立行政法人理化学研究所OB

要約  近年、研究機関や産業界から抵抗加熱方式による高温で小型化、薄型化、高性能化の要望が多くなってきている。薄型で小型化にするために、ヒーターを面状にして高温に耐える適正な基板及び発熱体をいろいろ検討し、小型面状ヒーター「マイクロセラミックヒーター」を製品化した。シンプル面状構造なので、小スペースでの加熱源で均一な温度分布が得られ、温度センサーを内蔵することにより、さらに高精度な温度制御が出来る製品も商品化した。ヒーターは、クリーンで高純度な熱源を必要とするアプリケーション半導体製造装置・分析機器に最適で、短時間で高温に昇温できる製品になっている。

 

電気ヒーターによるドラム缶内容物の加熱

佐藤 一也

株式会社マイセック SE事業部 技術課 主任

石井 裕

株式会社マイセック SE事業部 技術課 

要約 弊社は生産工場の配管、タンク等の保温・加熱の手段として電気表面加熱システムの普及に40年前から携わってきた。今日に至るまでほとんどの工場では、重油ボイラーによるスチームトレースが主流で、工場の隅々までの保温・加熱の熱源となっている。年代の経過とともに数々の温度に敏感な新素材が開発され、耐熱温度に限りある樹脂製タンクや配管が普及し、許容温度範囲の限られた用途が増加した。今後CO2の削減・クリーンエネルギー・省エネの観点と原油高騰の影響等から、電気表面加熱は今まで以上に用途が広がるものと予測される。保温・加熱は物件毎に仕様が異なり、都度設計・施工となる。その中でドラムヒーターシリーズは容器形状がJISで規格化され、標準化を計ることのできる数少ない製品で、製薬・化学・自動車・塗装・食品等の広い分野で利用されている。また、危険場所で使用できる安全増防爆タイプのドラムヒーターも開発した。ここに200Lドラムヒーターの効率的な利用方法を示す。

 

EH_No.149(特集:電気加熱概論)
①抵抗加熱概論

畑 章

株式会社サーマル 生産部 技術Gr 次長